9年ほど前に図書館リニューアル記念の講演で作者本人を見たことがある。当時も書いたが人前で話すことには慣れていないような印象があったものの、内容や感じはよかった。行政社会学部のある大学を希望し、学生時代は軽音楽のサークルに在籍、卒業後は就職をせずに作家を目指し上京。本作からも小説を書くことに自信を持っていたことが容易にわかる。15作目の著書。はじめはなかなか進まなかったが、第二部<高原の手記>、アフリカ内部でNGOで働く高原が誘拐されたあたりからは一気に読了。本人のあとがきには「世界をとらえながら人間個々の心理の奥の奥まで書こうとする小説」とあった。深い。ほかの作品が気になった。
本文より~生きていたら、その中で、どんな小さなことでも肯定できることがある。~