いちょうの周りで

everyday life , walking and low mountaineering

麦屋町昼下がり

記録をしているわけではないので不確かだがこの季節にわりと読んでいるように思う。まわりの景色の中に際立つ緑が目に入り、力が湧くような気がするからだろうか。藤沢周平には、「又蔵の火」などの底にあって出口を捜せないまま終わるような作品もあるが、今回読んだものは明日が信じられる兆しが最後に見える秀作である。まだ捨てたものではない、諦めるなという気分にさせる。どれも下層武士を扱ったもの、取り巻く出来事を淡々と描いていく。すべてオール讀物に載る。

~空は朝から曇ったままで、茂り合う青葉の下はうす暗いほどだった。敬助が五十日の閉門を喰らっている間に、かがやく四月の空と光は遠くに去ってしまい、頭上に広がる陰鬱な空には、はやくも梅雨の気配が現れている。~「麦屋町昼下がり」から

  • 麦屋町昼下がり 昭和62年6月
  • 三の丸広場下城どき 昭和62年11月
  • 山姥橋夜五つ 昭和63年7月
  • 榎屋敷宵の春月 昭和64年1月